DATA
社会福祉法人 和会
特別養護老人ホーム 小泉の杜
日本建築家協会JIA・2016年度JIA優秀建築選(100選)受賞
平成27年度伊勢崎市景観まちづくり賞・建築物デザイン部門受賞
敷地周辺はポツポツと民家が点在する長閑な環境にあり、建物内の様々な場所から3方向に広がる山々を見渡すことができる。特別養護老人ホーム70人、ショートスティ10人、ディサービス30人を定員とした高齢者が生活する施設である。本計画では周囲の民家のスケールとどのような距離感を図るか、孤立しがちな施設内の生活と地域との共生をどのように取り組むか、生活環境の中でいかに光や風を感じながら豊かな生活ができるかが課題となった。
まず、居室群を周辺のスケールに合わせたボリュームに分割し、その間をガラス張りでオープンな空間として、街との繋がりが持てるようにした。また居室群をランダムに配置することで、スリットからの光の取入れや居室間の距離、窓の見合いを調整した。
居室のボリュームは自分の家としての意味合いを持たせ、それを取り巻く通路は外部的な街路を思わせる雰囲気とした。家から街路に一歩踏み出せば豊かな光と風、周辺環境を感じつつ、廻りの樹木が老人たちの心を和ませてくれることとなる。ランダムに配置された居室群に囲われた中庭は、老人たちが安心して集う場としていろいろな催しができるようになっている。
地域と密接なディサービス、地域交流ホールは外部からアクセスしやすい位置に配置し、ガラス張りとして街から中の様子が良く見えるようにした。
構造は居室群をRC壁式構造とし、シンプルなボックスの耐力壁とした。通路や共同生活室は梁の無い中空ボイドスラブの床でそれらを繋いだ。コンクリートボリュームとガラスというシンプルな構成でメリハリのある空間を作った。
建物の周囲を植栽で囲むことで、オープンでありながら街と適度な距離を保てるようにした。また植栽は、熱負荷の軽減にも役立つ。ガラス張りの部分は小庇を設け熱負荷を軽減し、多少の雨でも窓を開けられるよう配慮した。
将来的には『小泉の杜』という施設名のように、この敷地を核としてゆっくりと森(杜)が広がっていくことを期待している。
所在地 :群馬県伊勢崎市
敷地面積:5,705.49 m2
建築面積:2,622.83 m2
延床面積:4,900.49 m2
主要構造:鉄筋コンクリート造
規模 :地上2階
施工 :佐田建設
写真 :上田宏 鈴木研一