人形町の家

DATA

日本橋人形町における住宅の建て替えである。
賑やかなメインの商店街からは道1本入るものの、通りには新旧の飲食店や店舗が点在している。敷地の南側には7階建てのマンションが建っているため、南からの日差しを確保には十分に配慮が必要である。
また、今後増えていくであろう高層化されるマンションは地域との関係性が希薄となり、放置すると現在の街の魅力が失われてしまうことが危惧される。住宅の一部分であっても街に対して極力解放できるスペースを確保することがこの界隈の街の魅力を引き継ぐことになると考えた。

■街に対して開くこと、街の雰囲気を引き込むこと
街に対してできるだけ開くために、通りに面する部分に緩衝帯となる縁側を設けた。この界隈の風情を引き継ぐ要素として縦格子を用い、お祭りやイベントに合わせて、あるいは日常的に街とフレキシブルにつながりを生み出す仕組みとした。親世帯のスペースはリビング、寝室と奥にいくに連れてプライバシーの必要な部屋を配置している。
また子世帯のスペースは街の雰囲気を建物内部に引き込み、開口部を介して街と繋がるように意図した。将来的な展望も見据えて2世帯は完全分離としたが、小さいお子さんがいるため実際の生活は2世帯間の交流が密接になることが予想される。子世帯のリビングは2世帯が集まる場として、あるいは子世帯の仕事場としてフレキシブルに使われることを想定した。その際、より街と関係性を持たせておくことで住宅としての用途に留まらずその他の展開も可能になるようにした。

■街の雰囲気を引き込んだ居場所
子世帯は街の雰囲気を住宅内に引き込み、それを屋上テラスまで繋げたいと考えた。アプローチの階段と玄関の床の仕上げは、縁側と同じコンクリートの土間にラフな染色塗装を施したもので自然な路地の雰囲気を出した。リビング・ダイニングは吹き抜けを設け、上階のデッキと繋げて天井高の高い空間とした。壁は目地を設けたボードの上に経年変化によって生じたような味わいを持たせた特殊塗装を施し、床の仕上げは外部的なイメージを助長させるためにコルクタイル貼りとした。3階のデッキへはくの字に折れた階段で路地を歩くようにアプローチさせ、グリッドには乗らない形の吹き抜けを設けることで、自然発生的にできた横丁の雰囲気を出した。そこから異なるレベルに配置した小さな個室に階段などでアクセスするようにした。屋上テラスに面して設けた開口部からはビルの谷間から直射日光を取り込むことが出来、自然通風もできる。屋上テラスはビルの谷間とは言え、プライベートな小さな庭として活躍することになる

所在地 :東京都中央区日本橋
敷地面積:67.79m2
建築面積:54.19 m2
延床面積:161.75m2
主要構造:鉄骨造
規模  :地上3階
施工  :青木工務店
写真  :上田宏

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