3つのコートのある家

DATA

敷地は駅からほど近く、商店街と住宅街の境目に位置している。商店街は土地のポテンシャルが高く中層の建物が建ち並んでいるが、住宅街は北側斜線や日影規制によって高さの制限を受けるため低層となっている。用途地域の異なる東向いの中層マンションや高架を走る電車からは見下ろされる格好となり、プライバシーの確保が難しい環境である。プライバシーを考慮しつつ、心地良いゆったりとした生活空間を確保することが要求された。

■3つの庭と大きなコート

建物の外周部に街との緩衝帯として3つの庭と大きなコートを設けた。庭1はコートへアクセスするための庭で、水を張ることで全体が水盤となり、街の喧噪から離れたゆったりとした時間が流れる場所への導入部としての役割を果たす。中央に植えられた大きなクスノキは生活に潤いを与えると同時に街との緩衝帯となる。またオリーブが植えられた庭2は扉を全開放することでスタジオと一体的に利用できる。庭3はゲストルームと浴室に面した落ち着いた趣のある庭である。庭2と庭3の樹木は上階のダイニングルームからも見えるようにし、北側にあるダイニングルームが明るく心地良い空間となるようにした。

■全体構成

地下は独立して街に開くことのできるエリアとし、2階は生活の中心となるエリア、3階はプライベートなエリアとした。外部から直接アクセスできる地下1階はスタジオとゲストルームを設け、家族の使用だけでなく、貸スペースとして不特定多数の使用も可能である。1階は地下1階と生活エリアを繋ぐエリアで、2階は大きなコートを中心に、ダイニングルーム、キッチン、子供のアトリエなどのファミリースペースとリビングルームをスキップさせながら繋げた。コートに面した扉を全開放すると、取り巻く居室と一体となってよりダイナミックな空間となる。3階は主寝室、水回り、子供室をコートやテラスとの関係や家事動線を考慮して配置した。

 

■街に開いたプログラムを内包した住宅

この住宅は戸建て住宅として完結するだけでなく、都市のストックとして街やひとびとのニーズに合わせたフレキシブルな展開が可能な街に開いたスペースを内包している。建物の建ち方についても街との関係性が希薄になり過ぎないように配慮した。壁の配置や高さは周辺建物との関係を考慮しつつ決定し、外壁の素材に変化を持たせることで、均質で閉鎖的な外観にならないように配慮した。街との間に挿入した庭とコートは今後周辺建物が更新されていく際、建物とボイドの理想的なバランスの指標となることを目指した。

所在地:東京都目黒区

敷地面積:295.97m2

建築面積:155.89m2

延床面積:361.04m2

主要構造:RC造

規模:地上3階、地下1階

施工:渡邊建設

写真:上田 宏

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