DATA
医療法人原会 原病院 南新館
本計画は永きに渡ってこの地域に根差し、精神医療サービスを提供してきた病院の建替え刷新計画になります。入院患者総数344人、デイケア30人、新規に開設する60人の介護付優良老人ホームの医療やサービスの質を確保しつつ、老朽化した病棟をいかに刷新していくかが課題となりました。工事のそれぞれのフェイズにおいてスタッフ動線や工事動線を確保すること、工事の騒音や粉塵との分離、患者への負担を最小限に抑えながら既存機能を継続する方法を慎重に検討し計画を進めました。
まず最初に、敷地南側のグラウンドに南新館を建設しました。 その後患者を移動し、空いた2期病棟を改修、そこに患者を戻した上で老朽化した1期病棟を解体、その跡地に新たな玄関となるラウンジ棟を建設し、最後に広場を整備して本計画が完了します。
―南新館の設計にあたってー
ホスピタリティのある環境づくり
樹木のある中庭を生活空間の中に点在させました。中庭は生活に安らぎを与え、光や風を取り込み、季節の移り変わりを感じることができます。中庭の吹き抜けは上下階の病棟の様子が見え、他のエリアとの関係性を作ります。また壁や天井の一部に天然木の板張りを用いて家庭的でぬくもりのある生活空間となるようにしました。
地域に開かれた環境づくり
敷地外周部の塀を取り壊し、代わりに低木を植えて〈地域に開かれた病院〉を具現化させました。広場・建物外周の庭・中庭を視覚的に連続させて、周辺環境と生活空間を柔らかく繋いでいます。建物の外周部に配置した病室や居室からは、広場の樹木や遠景の山々を眺めることができます。病院のファサードは、画一的にならないように縦長の窓をランダムに配置し、ボーダーと呼ぶ白い庇の長さや張り出す奥行を変えて、建物に豊かな表情を生み出すようにしました。周辺環境に対して建物のボリュームが威圧的にならず、輪郭を曖昧にして地域に馴染ませる効果を期待しました。
多様性のある居場所の構築
病室群の中心にある開かれた食堂以外に、いくつもの居場所を点在させました。中庭が見える数人が集える場所、遠景の山が見えるパーソナルな場所、浴室脇の休憩スペース、囲まれて落ち着いた場所など、その時々で居場所が選べるようになっています。大勢で集ったり、数人でおしゃべりしたり、ひとりで静かに過ごしたり、その時々の体調や病状に合わせて過ごすことができるように配慮しました。
構造形式
建物の外周部を鉄筋コンクリートラーメン構造の病室群で囲むことで地震力を負担させ、内側は鉛直荷重のみを負担する鉄骨無垢柱を配置しました。それにより食堂などの内部空間は見通しが良く、広がりのある生活空間を実現しています。細い鉄骨無垢柱による軽やかな空間は中庭との一体感を損なう事無く、スタッフからの見通しなど管理面でも貢献しています。
所在地:群馬県伊勢崎市
敷地面積:13265.12m2
建築面積:2534.39m2
延床面積:7559.24m2
主要構造:RC造 一部鉄骨造 柱状改良
規模: 地上3階
施工:関東建設工業、グンエイ、マルフク電気
写真:上田 宏