ロードサイドの家

DATA

「第47回東京建築賞奨励賞」受賞

敷地は地方都市の徐々に開発されつつあるエリアにある。幅員30mの幹線道路に面し、交通量は今後増していく事が予想される。幹線道路沿いには高齢者施設や小規模のオフィスビル、飲食店、アパート、住宅などが無秩序に建ち並びつつある。車移動が中心の地方都市にあって、道路の喧騒や車の走るスピードに対してどのように住空間を守り、街に開くかがテーマとなっている。

□周辺環境に対する建ち方
敷地の周囲を塀で囲み住空間を守るという建て方が一般解としてあるとすれば、もっと積極的に街と関係性を保ちながら、住空間のプライバシーや居住性を高められないかと考えた。プライバシーが必要なメインの生活空間を2階に持ち上げ、1階はスタジオやゲストルームなど、生活空間とは切り離して街とのつながりを形成できるセミパブリックな用途の諸室を配置した。それぞれの用途ごとに建物を分節化し、すき間を空けることで、街から中庭が見え視覚的につながりが持てるようにした。

□生活空間を包み込む「ループウォール」
上階に設けたメインの生活空間は、周囲を「ループウォール」と呼ぶ帯状の壁で囲み、静かな住環境とプライバシーが確保できるようにした。「ループウォール」によって形成された建物の輪郭は、街と生活空間のゆるやかな境界となり、街と建物をボーダーレスに繋ぐ役割を果たす。「ループウォール」の外壁には大きなレッドシダーの木材をランダムに張り合わせ、道路のスケール感に対峙するざっくりとした仕上げとした。

□敷地を貫く「コリドー」と住戸内の「インナーコリドー」
幹線道路と並行に敷地内を横断する「コリドー」を設けた。「コリドー」はスタジオ、ゲストルーム、中庭、住宅へと続くアプローチ通路であり、駐車場への通り抜け通路でもある。「コリドー」は人を積極的に呼び込み、建物を街に開放するための装置となり、人々を道路の喧騒から静寂な中庭へと誘う。「コリドー」の上階の住戸内には、「インナーコリドー」と呼ぶ内と外をつなぐ中間領域の場を設けた。

□場のテリトリー
それぞれの場は独立した部屋としてだけでなく、外部や隣室とつながることで豊かな広がりを得る。例えばスタジオは街とつながり、ゲストルームは建具をフルオープンにすることで中庭と一体となる。ダイニングは北側のヤマボウシや中庭に植えられたシマトネリコを生活空間に取り込み、2階のリビングテラスはリビングと一体化しダイナミックな空間となる。また、寝室も建具を開閉することで浴室とワンルームとなり、南側の「ループウォール」まで広がりとして意識される。3階のジムやジャグジーは周辺の山々の景色を楽しみ、無限のテリトリーの広がりを獲得することができる。

所在地:群馬県前橋市
敷地面積:446.95m2
建築面積:231.20m2
延床面積:365.94m2
主要構造:木造(在来軸組工法)
規模:地上3階
施工:篠田工務店
写真:上田 宏

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