かぜの小路

DATA

第25回千葉県建築文化賞優秀賞 受賞

周辺環境

最寄駅の「流山おおたかの森」周辺はつくばエクスプレスの開通により都心へのアクセス時間が大幅に短縮され、通勤圏として道路や土地の開発が急ピッチに進んでいる。一足先に開発が進んでいる駅周辺はショッピングセンターや高層マンションが建ち並んでいる。敷地は駅から13分程の距離にあるが、造成が進む周辺敷地も続々と一戸建てやアパートが建ちつつあり、今後もかなりの数の住宅が供給されていくことが予想される。

この地はおおたかの森という名前の通り、以前は手つかずの森も残っていた。しかし初めて訪れた5年前には、森は切り崩され造成が始まり、これまでのコンテクストは一掃されてしまっていた。デザイン的な拠り所の無い中で、以前のような緑の多い環境を取り戻すことがまず重要であると考えた。本計画では外周部に極力樹木を配置し、中庭にはドングリの生るメインツリーと赤や黄色に紅葉する樹木を設け、四季を通して楽しめるようにした。

配置計画

本計画は若いファミリーやゆとりの空間を望む単身者に向けた計画である。敷地内に野のみちのような通り抜けの小路(こみち)を設け、その小路から全住戸がアプローチするようにした。小路は単なる通過動線では無く、子供達が元気に遊んだり、テーブルを出してお茶を飲んだり、本を読んだり、おしゃべりしたりする生活空間の延長としての場と位置付けている。各住戸から大きな窓を通して見守れるようになっているので、子育て世代のファミリーにとっても安心である。小路によって4つの棟に分割されていて、それぞれの棟が5戸ないし6戸の住戸で構成されている。4つの棟はそれぞれ間取りや大きさに変化を持たせ、ライフスタイルや家族構成によって住戸を選べるようにした。建物のデザインどこの街にもあるような個性の無い建物が建ち並ぶ新興住宅街の風景ではなく、住み手の顔が見える生き生きとして個性的な街並みにしていかなければならないと考えた。都市のコンテクストやデザイン的な手掛かりが少ない中、街並みの先陣を切る意味で、家並みが連なる外観デザインにすることとした。家型をした屋根形状は、大振りな街区を小さなスケールに分節し、かわいらしい形のスカイラインを作る。それと同時に内部空間も豊かなものにしている。また、4棟が集まってひとつの集合体として意識されるように建物の外周部にはレンガや木をイメージさせる色、小路側は住人同士のコミュニティの場、みんなの屋外リビングという意味合いを持たせた白色とした。外周部や小路側は壁を2重にし、テラスや庭、設備スペースとして利用し、小路や街と生活が直接対峙しないようなバッファーゾーンを設けた。

住戸タイプ

4つの棟の内、A・B棟は比較的ゆったりとしたファミリータイプである。A棟は水廻りをセンターコアに納め、周囲を回遊できるようになっている。B棟は北側の中庭側が裏側にならないように南北方向にリビングルームを設け、中庭側にもリビングの大きな窓が面するようにした。A・B棟に囲まれた中庭は子供達の遊び場にもなるように木登りのできる木や井戸を設けている。C棟は個性的なライフスタイルに特化したメゾネット住戸とした。独立した小さな庭を持つSOHO的な利用も可能なスタジオタイプと車を大事にする人向けのガレージハウスを交互に配置した。D棟は主にDINKSや単身者向けのコンパクトで使いやすい住戸である。2階の住戸はすべての棟においてリビングと繋がる大きなテラスを持ち、屋根の形状をそのまま内部空間に現わしたダイナミックで変化のある空間となっている。

所在地:千葉県流山市おおたかの森

敷地面積:1950.59m2

建築面積:891.13m2

延床面積:1536.01 m2

主要構造:木造(2×4工法)

規模:地上2階

施工:スターツCAM

写真:上田 宏

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