森の小屋

DATA

「第48回東京建築賞優秀賞」受賞

「第1回JIA長野建築賞2022」受賞

「JIA優秀建築選2022」100選入選

敷地は軽井沢追分の標高1000mの地点を東西に走る1000m林道を北に少し上った辺りにある。
周辺は民家も疎らな上、北側には国有地の鳥獣保護区が広がっているため、将来民家が建つことも無く、現在の森は担保されるはずである。
敷地は扁平な菱形をしていて、その一辺が砂利道の道路に接道している。
短手の対角線の軸がほぼ南の方角で、菱形の平面形状に対して包み込むように扇状の斜面地となっているため、一見シンプルな敷地形状を読み解くのにかなりの時間を要することとなった。
最初にこの場所を訪れた時、手付かずの森が広がり南に緩やかに傾斜している敷地を見て、森と共に過ごし、自然の力を享受するための質素な小屋を作るには打って付けの場所だと思った。
より質素でプリミティブな場を作るために、敷地形状にはできるだけ手を加えず、自然の地形をトレースするようにレベルの異なる床を設けることとした。
下の床は屋根のある屋外空間、中間の床は半屋外的な内部空間、上の床は独立性のある内部空間とし、上にいくほどブライバシーを持たせた。
また、それぞれの床は用途を限定することなく、フレキシブルな使い方ができるようにして、ミニマルな空間を実現させた。
例えば、下の床は玄関ポーチであり、庭と繋がるテラスであり、夏季はメインのダイニングルームになる。中間の床は外周部をキッチンやベンチ、薪ストーブで囲み、中央には何も置かず多目的に利用する広間である。
テラスと広間の間はフルオープンにし、一体的に使うこともできる。テラスのベンチと対角線上に広間のベンチを設け、それぞれの居場所を平面的、断面的に最大限の距離を持たせて配置し、自然と共にある森の中の居場所を存分に楽しめるようにした。
上の床に設けたベッドスペースは広間とレベル差を持たせて繋げ、昼間は大きなソファーとして寛ぐスペース、夜はベッドスペースとなる。浴室は道路から反対の山側に向け、北側に広がる森の生命力を享受できる場となるようにした。
森の中にセットされた3枚の床は、それぞれの場で周辺の森と呼応するように開口部が選択され、敷地なりにレベルを変えて重ねる事で、より森と一体化した居場所となるようにした。
構造は木造在来工法平屋建てであるが、床を地面から持ち上げ最低限の基礎に乗せ、部分的に床を張り出した。広間部分の屋根を支える5本の表わしの柱は、木製建具の方立を兼ねた75×150㎜の扁平柱とし、森との一体感を損なわないように配慮した。

所在地:長野県軽井沢町

敷地面積:992.31㎡

建築面積:53.93m2

延床面積:51.54m2

主要構造:木造在来工法

規模:地上1階+ロフト

施工:ハピアデザイン

写真:上田 宏

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