階段ギャラリーのある家

DATA

敷地は都内の閑静な住宅街にあり、周辺は住宅が比較的密集しているエリアである。

そこに所有する絵画や写真、ポスターなどを鑑賞しながら、趣味のレザークラフトやルアー作りなどを楽しみ、2頭のイタリアングレイハウンドと共に楽しく生活できるご夫妻の家が求められた。

私たちはふたつの手法でこの家の設計に臨んだ。

ひとつ目は敷地周辺の都市の余白空間と、新たな生活空間を巧く結び付け、余白空間を増幅させる事である。東と北にある隣家に接した中庭、西の隣家旗竿敷地に接した玄関へのアプローチ空間、東隣家の庭に面するガレージ・勝手口アプローチは、周辺の余白空間と連続させることでより広がりのある余白空間となる。そして周辺環境にも配慮することで、お互いの空間共有によって相乗効果による豊かな住環境を創出することができる。これはホライゾンタルな視点からである。

ふたつ目はご夫妻、愛犬のためのバリアフリー空間を重要視しつつも、各フロアに配された部屋を柔らかく結び付けることである。これはバーティカルな視点からということになる。

ご夫妻がお持ちの数多くの絵画、ポスター、写真等を新しい家に飾りたいというご要望を受け、私たちはこの家の中心にゆったりとした階段室を設け『階段ギャラリー』を作ることとした。左官壁で包まれた塔状の「階段ギャラリー」を回遊しながらそれらを鑑賞することができる。地下書斎から屋上テラスまで貫く『階段ギャラリー』には大小の開口をいくつか設け、3フロアに点在するそれぞれのスペースの雰囲気をお互いに感じ取ることができるようにした。階段を上り下りする際も開口を通してリビング、アトリエ、書斎などに居る家族とのコミュニケーションが容易にできる。2匹の愛犬たちも『階段ギャラリー』を軽やかに移動しつつ、いろいろな場所にできた陽だまりを上手に探すのを目にするのも微笑ましい光景である。

所在地:東京都目黒区

敷地面積:141.09m2

建築面積:81.93m2

延床面積:182.90m2

主要構造:木造軸組在来工法+RC造

規模:地下1階 地上2階

施工:小川建設

写真:上田 宏

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